それでも守りたい世界があるんだ
「それでも！ 守りたい世界があるんだ！」 <br> このセリフは、『機動戦士ガンダムSEED』最終話「終わらない明日へ」にて、 主人公キラ・ヤマトがラウ・ル・クルーゼに立ち向かう際に放った言葉である。<br><br> 人類の愚かさと報復の連鎖を嘲笑し、 “全てを滅ぼすことでしか救われない”と語るクルーゼに対して、 キラは絶望の論理を真っ向から否定する。 その叫びとともにフリーダムは突撃し、 プロヴィデンスを貫く――。 **「それでも守りたい世界があるんだ」**は、 破滅の淵に立たされた少年が放つ、希望の最後の宣言である。
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否定の上に立つ肯定
このセリフの強さは、“それでも”という逆接の一語に集約されている。 クルーゼが説くのは、戦争も差別も遺伝も、全て人間のエゴの産物という絶望の真理。 キラ自身もそのエゴの延長線上に生まれた存在である。 つまり彼は、**論理的にはクルーゼの側に立たざるを得ない**。 だがそれでも――“理屈を超えて信じたいものがある”と叫ぶ。 この瞬間、キラの言葉は倫理や科学を超えた**人間的本能の肯定**として響く。
人間の限界を超えた“意思”の台詞
「守りたい世界」とは、具体的な場所や人々だけでなく、 “まだ人が人を信じられる可能性”そのものを指している。 クルーゼが象徴するのは、遺伝と憎悪に支配された決定論の世界。 それに対しキラは、選択と意志によって未来を掴もうとする。 ここで描かれるのは、**運命を拒絶する人間の自由意志の瞬間**だ。 ゆえにこのセリフは単なる熱血的な叫びではなく、 哲学的には「人間とは希望を諦めきれない存在である」という命題そのものを体現している。
“理想主義”を貫くという勇気
SEEDがシリーズの中で異彩を放つのは、 このセリフが“綺麗事の極致”として提示されながら、 同時に“綺麗事を言う覚悟”を描いている点にある。 戦争の現実を知り尽くしたキラが、なおもこの言葉を選ぶ。 それは無知の楽観ではなく、**痛みを知った上での理想主義**である。 この「それでも」という逆接は、戦争を生き抜いた者にしか言えない重みを持つ。
シリーズを超えて残った“人間宣言”
このセリフは以後、ガンダムシリーズ全体を貫く“人間賛歌”として引用され続けた。 冷笑と諦観の時代にあっても、 なお希望を選ぶ人間の姿を描くための象徴句―― **「それでも守りたい世界があるんだ」**。 それは戦争という絶望の中でなお、 “愛も友情も信頼も、無意味ではない”と信じる者の祈りであり、 ガンダムという作品群の核心を最も純粋な形で言葉にした一節である。
