もうこれで終わってもいい
「もうこれで終わってもいい。だから…ありったけを。」は、冨樫義博による『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編131話において、 主人公・ゴン＝フリークスがネフェルピトーとの対決に臨む中で、自らの命と引き換えに“全てを賭ける”覚悟を固めた瞬間に発されたセリフである。<br><br> カイトの死に対する激しい怒りと、悲しみ、そして自責──それらすべてを内に抱え続けていたゴンは、 ついに自らの命、念、未来すべてを代償にして「今この瞬間の最大出力の力」を引き出すという、 極めて**破滅的な取引**に同意する。<br><br> その直前に口にされたこの言葉は、単なる“決意”ではない。 それは**「生きる」ことよりも「怒りを遂げる」ことを選ぶ**という、 少年漫画の主人公としては異例の方向性をはらんだ選択であり、冨樫作品ならではの**倫理のグレーゾーン**がここに集約されている。<br><br> 作品外では、このセリフは「覚悟の完成形」としてミーム化しており、 すべてを投げ打って一点突破に挑むような局面、あるいは極端な決意を示す際に引用されるようになっている。
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命の自己放棄と覚悟が重なる“最終値の言葉”
「もうこれで終わってもいい」というセリフの構文は、**自己完結的な宣言**であり、 「～してもいい」という語尾が、あえて第三者の許可を求めるような柔らかさを含んでいる。
だが、その実態は極めて過激で、**自己の命や未来を差し出してでも“この一撃”に賭ける**という、 **非合理と感情の極致**にある行動を“静かに”肯定する異様な言葉である。
セリフの中に怒りや悲しみが直接言及されない分、 **「静かな死の覚悟」が恐ろしいほどに重くのしかかる**構造になっている。
演出のコントラストと“ゴンさん”の出現演出
このセリフが発された直後、ゴンの身体は一気に変容し、 時間をかけて成長するはずだった肉体・念能力・オーラを“強制的に未来から引き出す”という、 **理を逸脱した覚醒＝通称「ゴンさん」**の姿が現れる。
それまでの少年的なシルエットからはかけ離れた異形の姿に変貌する中で、 このセリフが持っていた“静かな重み”が、逆にその**異様なビジュアルとの対比で強調される**。
つまり「もうこれで終わってもいい」は、**「ゴン＝フリークスというキャラクターの自己犠牲の境地」**を静かに示す言葉であり、 その後の“狂気の爆発”とのギャップによって、視聴者に凄まじい印象を残す。
現代的引用：努力・犠牲・一点突破の象徴ミーム
作品外においては、「もうこれで終わってもいい」は、 **過度な努力や、自らを削って何かを成し遂げようとする瞬間**に引用されることが多い。
たとえば、締切ギリギリの完徹作業、 試験前の最後の一夜、 あるいは心身を酷使した努力の末に「全てを出し切った」瞬間などに、
このセリフが冗談混じりに使われる。
しかしその裏には、**「何かを得るために自分を消費してしまった」という本質的な破滅性**がある。 だからこそ、このセリフは単なるネタではなく、 **覚悟と狂気を共に孕んだミーム**として、長く支持されている。
