この味は 嘘をついてる味だぜ
「この味は 嘘をついてる味だぜ」 <br> このセリフは、荒木飛呂彦による漫画『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』において、 ブローノ・ブチャラティが初登場時に放った名言である。<br><br> 彼はギャング組織の一員として、主人公ジョルノ・ジョバァーナに接触する。 その直前に、ジョルノが「盗みをしていない」と言い訳するが、 ブチャラティは相手の言葉を信じず、あろうことかジョルノの顔を舐めて“嘘”を見抜こうとする。<br><br> 劇画調のシリアスなタッチで描かれる中、 同性の顔を舐めながら「味」で真実を判断するという突拍子もない行動。 そこで発せられるこのセリフは、異常さと説得力を同時に帯び、 ブチャラティという人物を一瞬で観客の記憶に刻み込んだ。<br><br> 以降の物語では仲間思いで冷静沈着なリーダーとして描かれる彼だが、 初登場においてこの台詞は、カリスマと奇行性を併せ持つキャラクター性を鮮烈に印象づける役割を担っている。
もっと詳しく見る
異様な身体行為による真実判定
普通ならば「目を見れば嘘は分かる」や「声色で判断する」といった描写が用いられるが、 ここで荒木飛呂彦は“舐める”という異常な身体行為を選んだ。 観客にショックを与えると同時に、ブチャラティの直感的で動物的な勘を象徴させる。
この選択により、「嘘を暴く」というありふれた行為が唯一無二の演出に変わり、 キャラクターの特異性を際立たせている。
劇画調とシュールさの落差
このシーンは写実的で硬派な劇画調で描かれる。 しかし、その内容は「他人の顔を舐めて嘘を味で判定する」というシュール極まりない行為。 硬質なタッチと奇怪な行動の落差が、読者に強烈な違和感と笑いを同時に生む。
つまり、荒木作品特有の「真剣さとナンセンスの同居」がここで極まっているのだ。
ミーム化する言葉の歪み
「嘘をついてる味」という言語表現自体も異常である。 通常「味」は食べ物や飲み物に関する感覚であり、 人の発言の真偽に結びつけるのは言語的に飛躍している。
だがこの飛躍が逆に言葉の中毒性を高め、 ネットやファンの間では「何か怪しいときに冗談として引用する」万能フレーズとなった。 真剣さとギャグ性を同時に持つため、パロディや二次創作でも広く流用され続けている。
