一護でさえ

「一護でさえ───！！」 この言葉は、漫画『BLEACH』最終章「千年血戦篇」における、アスキン・ナックルヴァール戦で週刊少年ジャンプ本誌に掲載された際の**編集部の煽り文**である。その衝撃的すぎる一コマとともに、ファンの間で語り草となった。 シーンの主役は、星十字騎士団（シュテルンリッター）の一人、アスキン・ナックルヴァール。彼は“致死量の概念”を操る「ギフト・バルト（毒入りプール）」という能力で、敵の体内霊圧を解析し、霊子の“許容量”を致死量に変えてしまうという極めて理不尽な能力を持つ。 その餌食となったのが、他ならぬ主人公・黒崎一護だった。

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まさかの“戦闘描写ゼロ撃沈”で絨毯に

通常であれば、一護が新形態で圧倒的なバトルを繰り広げる展開を予想するところだが、この回では**戦闘シーンが一切描かれない**。アスキンの独白が続き、ふと振り向いた彼の足元には—— “絨毯のようにペラペラになった黒崎一護”が転がっていた。その異様な構図に合わせて、週刊少年ジャンプ編集部が放ったのがこの煽り文： > 「一護でさえ───！！」圧倒的な文面のシンプルさと、主人公をあっさり床に転がす久保帯人のセンスが合わさり、瞬く間に読者の間で**ネタ化・ミーム化**された。

久保帯人の“抜きの演出”

久保帯人作品の魅力のひとつに「間」の使い方がある。激しい戦闘の中に、唐突な静止。この“描かない勇気”が、BLEACHの緊張感とシュールさを生む。このシーンもまさにその典型であり、戦闘を描かず結果だけを提示することで、 **逆に読者の想像力を極限まで刺激**している。「何が起きたのか分からない」という不安と、「まさか主人公が…」という意外性が重なり、結果としてこのシーンは“ギャグ的衝撃”すら生んだ。

アスキン・ナックルヴァールという異質な敵

彼の能力は、単純な力比べでは勝ち目がない。戦闘力や霊圧の強さではなく、“構造的な勝敗”を突きつけるタイプの敵である。それゆえに、「一護ですら防げない」という絶望感を演出するには最適なキャラクターだった。アスキンは戦闘後、倒れた一護を見下ろし、 > 「そう思うだろ？一護───って、もう聞こえちゃいねェか」と淡々と語りかける。この静けさが、むしろ残酷さを際立たせている。