お前は俺だ

鏡像関係としての宿敵構造

真人は虎杖の対極に位置する敵でありながら、同時にその“裏側”でもある。 「お前は俺だ」という言葉は、単なる挑発ではなく、**己の存在を他者に投影する鏡像的宣告**である。 真人が「呪いとして生まれたから呪う」と語るとき、虎杖もまた「人間として生まれたから祓う」と行動するだけの存在にすぎない。 この対比が、**善悪の二項対立を崩壊させる構造的装置**となっている。

正義と呪いの表裏一体性

虎杖が抱く「人を助けたい」という感情は、呪霊を祓うという暴力行為と表裏をなす。 真人はそこにこそ“同質性”を見いだし、「ペラッペラの正義感」と嘲笑する。 つまり真人の「お前は俺だ」は、**虎杖の正義を呪いと同一平面に引きずり下ろす哲学的転倒**なのだ。

人間性の崩壊から再構築へ

この言葉を受けた虎杖は一度、自らを“人間”として見失う。 だが「俺は部品だ、そこに呪いがいるから祓うだけだ」と開き直ることで、 彼は“倫理”ではなく“機能”によって自己を定義し直す。 これは真人の言葉を否定するのではなく、**受け入れた上で超克する構造**であり、 人間性を「呪いを引き受けた覚悟」として再定義する瞬間でもある。

存在論的な同一化の恐怖

真人の「お前は俺だ」という言葉が恐ろしいのは、 それが単なる悪役の挑発ではなく、**存在論的な真実**を孕んでいるからである。 人を殺すことで存在を確かめる真人と、人を救うために呪霊を祓う虎杖は、 どちらも“他者を介して自己を証明する存在”である。 この構造の中で、呪術廻戦は「人間とは何か」という問いを極限まで研ぎ澄ませている。

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