忌憚のない意見ってやつっス
「忌憚のない意見ってやつっス」 <br> このセリフは、猿渡哲也の漫画『TOUGH』に登場する鯱山十蔵（しゃちやまじゅうぞう）の発言である。<br><br> MMAの試合を観戦中、塩試合（判定決着ばかりの退屈な試合）に苛立つ鯱山が放った一言であり、 彼の粗野でストレートな性格と、格闘技に対する**“魂の純粋主義”**を象徴する台詞となっている。 その後の「それでも文句があるんならいつでも喧嘩上等っスよ」と合わせて、 彼の信念と暴力性が一体化した、“猿渡節”の真骨頂とも言える場面である。
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礼儀を装った喧嘩腰
「忌憚のない意見」という言葉自体は、一般的には“遠慮なく率直に意見する”という 丁寧かつ知的な表現だが、鯱山の口から出ると完全に**ケンカの前フリ**になる。 このギャップが生む皮肉とユーモアこそ、猿渡作品の味であり、 **“語彙の暴力”を暴力で補うキャラクター像**を際立たせている。
言葉の使い方が戦闘スタイル
鯱山にとってこのセリフは、会話の中でも戦っているという証である。 「忌憚のない意見」と言いながら、実際には相手を挑発し、 いつでも“実戦”に移れるテンションを保っている。 つまりこの一言は、**言葉の格闘技**でもあり、 彼が“話す＝殴る”という猿渡的戦闘哲学を体現している瞬間なのだ。
プロレスから総合へ──信念のズレ
元プロレスラーである鯱山は、エンタメ性を重視しながらも、 “戦い”に対する誇りと潔さを持つ人物。 MMAの“安全策”や“判定勝ち”を嫌悪する彼の言葉には、 **「勝敗よりも魂を見せろ」という武人の価値観**が滲む。 この一言は単なる皮肉ではなく、 “格闘技の軟化”に対する鯱山流のアンチテーゼなのだ。
“っス口調”に宿る皮肉の柔らかさ
鯱山の語尾「っス」は、体育会系の上下関係を示す柔らかい語感を持ちながらも、 この場面では完全に**攻撃性をカモフラージュする武器**として使われている。 言葉を柔らかく包んでいるようでいて、 中身は拳のように硬い。そこに“暴力と礼儀の共存”という猿渡作品の独自性がある。
