俺は俺の事を好きな人が好きだ
「俺は俺の事を好きな人が好きだ」 <br> この台詞は、『チェンソーマン』第40話「恋・花・チェンソー」にて、デンジが心の中で呟いた独白である。<br><br> マキマとのデートを終え、「もう他の人は好きにならない」と誓った直後、 雨宿りの場で出会った少女・レゼに一瞬で心を揺さぶられたデンジ。 その矛盾と混乱の中で生まれたのが、この正直すぎる一言だ。<br><br> 自分に好意を向けてくれる人を好きになる―― それは恋愛の理屈をすべて吹き飛ばす、 **本能と欲望のままに生きるデンジという少年の“核心”**でもある。<br><br> この言葉は、愚直で浅はかで、しかし痛いほど人間的だ。 誰かを想うより先に「自分を好きでいてくれる」ことを求めてしまう、 デンジの孤独と渇望が、笑いと哀しみを同時に滲ませている。
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愛の自己循環
「俺の事を好きな人が好き」という命題は、 一見すると自己中心的だが、実は**愛の出発点として極めて純粋**である。 なぜならデンジは、誰かを愛する方法を知らない少年だからだ。
過去に愛も家庭も与えられなかった彼にとって、 「自分を好きでいてくれる」という経験は初めての幸福であり、 それを“愛”と呼んでしまうのは自然なことだった。
笑いと共感の同居
この独白が読者の心を掴んだのは、 それが“恋の愚かさ”と“人の正直さ”を同時に描いているからである。 マキマへの誓いを破ってしまう滑稽さも、 誰かに好かれると好きになってしまう脆さも、 結局は「人間の弱さ」と「愛されたい願い」に根ざしている。
だからこのセリフは笑えるのに痛い。 そして、デンジという少年が“人間”であることを、 最も率直に示した瞬間でもある。
**欲望・孤独・承認欲求――それらすべてを肯定してしまう一句。** 「俺は俺の事を好きな人が好きだ」は、 愛の定義すら笑いながら壊してみせる、 チェンソーマンという作品の核心そのものなのだ。
