いいんだよ忘れて

戦いの中でしか生を感じられない者

鹿紫雲は「戦うこと」そのものを目的として現世に受肉した呪詛師である。 そのため、戦闘以外の価値——友情・義理・救済といった“人間的要素”をほとんど必要としていない。 「忘れていい」とは、単なる慰めではなく、**戦士としての純化宣言**でもある。 彼にとって戦いとは罪でも救いでもなく、ただ存在を証明する唯一の手段であった。

倫理を超えた肯定の美学

この言葉の冷たさの裏には、**戦闘という本能への肯定**が潜む。 鹿紫雲は善悪の二元論に囚われず、五条や宿儺の戦いを“美”として見ている。 だからこそ、「忘れて」という言葉が**救いにも似た許し**として響く。 生に執着せず、死すらも一つの舞台と見なす鹿紫雲の達観が、この短い台詞に凝縮されている。

ミーム化された“無関心の美学”

本編では哲学的な一言として機能する一方で、 このコマは「忘れてもいい」「もういいんだよ」といった日常的文脈でも使える汎用性を持ち、 SNS上ではネタ的に引用されることも多い。 しかし、その軽やかさこそが、鹿紫雲というキャラクターの**死生観の軽やかさ＝重みのなさ**を象徴している。 彼にとって「忘れる」とは無関心ではなく、**すべてを等しく肯定する悟りに近い境地**なのだ。

閉じる