冨樫義博

経歴と人物像

冨樫は、大学在学中から漫画賞に投稿し、1986年に『とんだバースディプレゼント』でデビュー。 『てんで性悪キューピッド』で連載経験を積み、『幽☆遊☆白書』で爆発的な人気を得た。 その後も創作意欲を絶やさず、1998年から『HUNTER×HUNTER』を連載開始。 同作は深い心理描写と哲学的テーマ、そして予測不能な展開で高い評価を得ている。 私生活では『美少女戦士セーラームーン』の作者・武内直子と2005年に結婚。 結婚式では、それぞれの代表作の声優である佐々木望と三石琴乃が司会を務めたという逸話が残る。 弟・冨樫秀昭も漫画家であり、背景作業を手伝うなど兄弟間での協力も確認されている。

作風と創作哲学

冨樫の作風は、「善悪の境界を曖昧にする人物像」と「複雑な心理描写」に特徴がある。 『幽☆遊☆白書』の妖怪や『HUNTER×HUNTER』のキメラアントなど、当初は敵として描かれる存在が次第に“人間的な善性”を示す構成は、彼の代名詞的手法である。 また、守られる側の人間がむしろ醜悪に描かれるなど、社会風刺や倫理の揺らぎを物語に織り込む点も特徴的。 絵柄は柔らかく丸みを帯びた線を基調としつつ、時に荒々しく、時に緻密でリアルな筆致を見せる。 本人は「キャラクターの掛け合いを漫才のテンポで描く」と語り、論理展開とリズム感を重視している。 カラーワークではアクリル絵具を愛用し、厚塗りによる重層的な色表現を好む一方、コピックなどのアルコールマーカーは苦手と公言している。

休載・健康問題と創作環境

冨樫は慢性的な腰痛により、長時間の執筆が困難な状態が続いている。 『HUNTER×HUNTER』では、10話掲載後に長期休載に入る“断続掲載”のスタイルを確立。 2014年には重度の腰痛による公式休載発表があり、2022年には「2年ほど椅子に座れない状態だった」と自ら明かしている。 2022年5月、突如としてTwitter（現X）を開設し、原稿の端に記したページ数写真を投稿。 村田雄介や井上コウセイが「本人確認済み」と明言したことで、本人アカウントと認定された。 投稿では「背景指定完了」などの進捗報告が続いており、復帰への努力が見て取れる。 冨樫は「アシスタントを増やせば良いという話ではなく、自分の手で全て描きたい」と語っており、創作への執念は衰えていない。 休載がネタ化されるほど話題を呼ぶ一方で、作品そのものの完成度への期待は依然として高く、現在も“待たれる漫画家”として第一線に存在している。

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